第十六章 仮面

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パシッ。 『見取図』をカメラに収めた二人は『資料室』の扉を静かに開けた。 ゆっくりと潜望鏡のように目だけを廊下に出す圭一。目と耳で注意深く外の様子を伺う。 いつどこから人が飛び出して来てもおかしく無い。急ぎつつも、ここは慎重さが要求される局面だ。 「よし、誰も居ない。行くぞ」 「OK」 静かに言葉を交わす二人。その顔には緊張感が滲み出ていた。 『研究所』に入る前は暑さで顔を真っ赤にしていた美緒も、今は妙に青白い。 まぁ、いつもの顔色に戻ったと言えばそうなのかも知れないが...... タッ、タッ、タッ...... タッ、タッ、タッ...... 静寂しきった廊下を二人は疾風の如く駆け抜けて行く。 密閉された空間は、必要以上に足音が遠くまで響いて行った。しかし人の気配は皆無と言っても良い。 もしかして、この研究所には人が誰も居ないのでは? よもすると、そんな安易な気持ちにも成り掛ける二人ではあったが、これだけの規模の建物だ。 しかも私設軍隊まで揃えている。普通じゃ考えられ無い話だ。ここはもしかして紛争地帯? そんな疑念すら生じて来る。 油断大敵......緩み掛ける気持ちと必死に戦う二人だった。 「ここは右よ」 「次のT字は左!」 「今度はそこの階段上がって!」
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