第十六章 仮面

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「なんだこのジジイ達は?! ちょっと分が悪い。一旦は引き上げよう!」 そう叫ぶと同時に、圭一は怯んだ老人に体当たり。 ドスンッ! 「うわぁー!」 苦し紛れの力業ではあったが、捻りの無いそのストレートな攻撃は逆に効果覿面。前方に僅かな活路を見出だした。 美緒は倒れた老人を飛び越えて、一気に駆け抜けて行く圭一の後に続いた。 「何? どうしたんだ?!」 「今銃声が聞こえたぞ!」 突然後方の扉が開き、中から複数の男が飛び出して来る。その者達の表情は皆殺気立っていた。 「あいつらを捕まえろ! 侵入者だ!」 「警報を鳴らせ! 兵隊庁舎に連絡だ!」 もうこうなってはどうにもならない。瞬く間に蟻の如く兵隊達が集まって来るだろう。 とにかく逃げるしか道は無かった。二人は疲れすら忘れ、ただ遮二無二に前へ前へと走り進んで行った。 「あのジジイ達なんであんな動きが速いのよ!」 脂汗を吹き飛ばしながら涙声で訴える美緒。青白かった顔色が信号機の如く再び赤に染まっている。顔色も展開に着いていくのが大変だ。 「そんなの俺が解る訳無いだろ。あいつらに聞いてくれ。とにかく美緒さん走れ! がむしゃらに走れ!」 バタバタバタ......  バタバタバタ......俄に騒がしくなった通路に響き渡る二人の追い詰められた足音。 そしてその音に被さるように...... 『ビー、ビー、ビー! 研究棟に侵入者あり! 守護兵は直ちにBー4エリアに向かって下さい。 繰り返します。研究棟に侵入者あり! 守護兵は直ちにBー4エリアに向かって下さい!』
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