第十六章 仮面

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美緒は素早くポケットからパスカードを取り出すと、タッチパネルに当てた。 すると、 ピー。 ガー。 僅かな電子音と共に、スライド式の扉が開閉を開始した。 そして二人は吸い込まれるように『ビレッジ』の中へと足を踏み入れて行く。 タッ、タッ、タッ......  タッ、タッ、タッ...... 部屋に入った瞬間、4つの目に飛び込んで来た景色......それは正に想像を絶するものだった。 「なっ、何なんだ?!」 「何よここ?!」 二人とも開いた口が塞がらない。頭の中が真っ白になる。 上を見上げれば......    雲一つ無い澄みきった青空。 前を見れば、    道路を挟んで軒を連ねる家屋。 右を向けば......    目の前は銭湯。      そして左を見れば......    踏み切りの遮断機。 「『ビレッジ』と言うよりかは......」 ............ ............ 「「ただの『街』じゃんか! 有り得ない!」」 今二人の目の前に広がる広大な景色...... それはどこにでもある『街』の景色そのものだった。 空こそは間違い無く作り物ではあるが、絶妙なライティングにより、目を凝らして見なければ、中々偽物とは気付かない精巧さだ。 平凡そのものの街ではあるが、平凡な街がここにある事は異常としか言いようが無い。
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