第十六章 仮面

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タッ、タッ、タッ...... 「なっ、なんだ? 誰か来るのか?!」 すると何やら銭湯の脇から足音が。それは間違い無く二足歩行の足音だ。犬や猫のものでは無い。 つまりそれはこの後、銭湯の脇から人が現れて来る事を示唆していた。 二人はあまりの展開の早さに、全く頭がついて行かない。そして次なる行動の方向性を決める前にその者は現れた。 タッ、タッ、タッ。 そして、 「こんにちわ」 野菜が顔を出したエコノミーバッグを抱えた中年女性は、笑顔で挨拶しながら通り過ぎて行く。 「こ、こんにちわ」 訳も解らず挨拶を返す二人。 ただ街の模型があるだけでは無く、実際にここで人が生活している......それはその事を正に裏付けるような遭遇だった。 こうなってしまうと、何だか迷彩服を着て銃を構える自分等の方が、逆に場違いに思えてくる。 でも実際その通りだった。平和な街に物騒な銃などは無用の長物だ。 「今のおばさんの顔見たか?」 「ええ、見たわよ」 「あれって......まさか東京都知事のあの人?」 「全く同じ顔してたわね」 「......」 「......」 キー......チャリン、チャリン。 今度は自転車の到来か。二番目の遭遇が訪れる。 すると、 「ハロー!」 金髪で大柄な中年男性だ。同じく笑顔で二人の前を通り過ぎて行く。
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