第十六章 仮面

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見れば確かに5人の少女は同じ顔をしている。いや、顔だけでは無かった。身長、体型、髪型までほぼ同じじゃないか! クローン人間? クローン牛は聞いた事があるが、まだ人間では聞いた事が無い。 因みに服も同じだった。揃ってオレンジ色のワンピース。実に可愛らしく、思わず抱き締めたくなる。 これがもし五つ子であったのなら、今頃メディアを賑わしているに違い無い。 ヒュルルルル...... 「あらら、目が回る......」 美緒はその場にへたれ込んでしまった。余りの衝撃に貧血を引き起こしたようだ。顔は真っ青。嫌な汗が額から流れ落ちている。 「み、美緒さん大丈夫か?!」 圭一は慌てて美緒の身体を抱き起こした。見たところ、余り大丈夫では無い。 一方、そんな二人の様子を、ただ何となく見詰めている5人の少女達。 この人達は誰? そんな事を言いたそうな表情だ。 『宮田桃』改め、今では『桜田桃』 実の母である宮田恵子が他界し、その妹である桜田美緒に引き取られて早1年。 今では美緒を母として認め、その母を誰よりも慕っている『もも』 もしこの中に『もも』が居るのであれば、こちらから声を掛けずとも、美緒の姿を見た瞬間、抱きついているに違い無い。 しかし今、目の前に立ち尽くす少女達の中に、そんな反応を示す者は居なかった。 この中に本当のももちゃんは居ない! 二人がそれを確信した正にその時だった。 ギー。 突如、スライド式の扉が開放を始めた。 すると外から、バタバタバタッ! 複数の乱暴な足音が『ビレッジ』の中に響き渡る。 「居たぞ! あそこだ!」 先頭の一人はそのように叫ぶと、同時に銃を構えた。 そして、 バンッ! 放たれた銃弾は、圭一の頭を掠めて、家の壁にめり込んだ。 捕らえようなどと言う気持ちは毛頭無いようだ。一発目から頭にロックオンしてきている。 「まずい、追っ手だ美緒さん。逃げるぞ!」 直ぐ様、圭一は美緒を抱き起こし、建物の影へと退散。貧血で目を回している場合では無い。
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