第十七章 玄武

4/19
前へ
/1040ページ
次へ
若者はその殆どが都会へと出向し、この村に残っているのは女子供と老人のみ。 自分の身を守る事すらおぼつかない中、体力的にも精神的にも、とてもでは無いが他人の救助に向かえる者などは居なかった。 もはやどうする事も出来ない......誰もが諦め掛けたその時だった。 「そっ、村長! 新たな情報が入りました。七人の若い女性の集団が、自らの足で隣村から土砂の山を越え、今神山エリアの逃げ遅れた村民を片っ端から救い出しているようです!」 ずぶ濡れとなり、村役場に駆け込んで来た村役人は、顔を紅潮させ歓喜の報告を行った。 「若い女性が七人だと?! それはもしかして......」 「は、はいっ。アマゾネスです! 公務で全ての部隊が日本各地に出向しておりましたが、『玄武』だけがこの惨事をいち早く察知し、この地に戻って来ていました」 「『玄武』?! 頭が代わったばかりのあの部隊か!......そいつは凄いぞ。 そうだ......我々もこうしておれん! 何か手助け出来る事もあるやも知れん。動ける奴を集めろ。すぐに出発だ!」 「はい!」 時刻は夜の9時。バケツをひっくり返したような激しい雨は、一向に衰える気配を見せない。 歴史的豪雨は、更なる箇所で川を氾濫させ、更なる地盤を弛めていった。二次災害、三次災害はもう目と鼻の先に迫って来ている。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加