第十七章 玄武

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『野戦病院』で一人右往左往しているのは『赤』だった。 「今、そっち行くから少し待っててね。はい、右手折れてるから今添え木当てるよ。痛いけど、ちょっと我慢して......はい終わった。 坊や、君は男の子でしょう。泣かない! はい次そっち行くよ!」 『赤』はアマゾネスの一員となる前、医学的な仕事をしていたのかも知れない。 動きに無駄が無く、見るからに手付きが慣れている。次々と運ばれて来る怪我人達に対し、迅速に応急処置を施していった。 言葉や表情における心のケアも決して忘れてはいない。殺伐たる状況であるにも関わらず、笑顔だけは決して絶やさなかった。 情け無用の仕事人も、今日ばかりは白衣の天使のように輝いて見える。 戦う事ばかりに着目しがちではあるが、こういった『赤』の持つようなスキルも、戦いには重要である事を思い知らされる一幕だった。 「ダッ、ダメだ!」 突如、エマの背後で慟哭の叫び声が立ち上がる。 「どうした?!」 慌てて振り替えるエマ。すると瓦礫の下に手を伸ばし、苦痛の表情を浮かべている『黄』の姿が真っ先に目に入った。 見れば額から血を流しているではないか。斜面を転げ落ちた石の類いにやられたのかも知れない。 「この下に子供が! 倒れた柱に足が挟まって抜けない。まだ息が有ります!」 『黄』は藁をもすがる思いで訴えた。必死の形相だ。頭から血が流れている事など、自分では気付いていないのだろう。
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