第十七章 玄武

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死神はいつでもこの少女を連れて行けるよう、もう目と鼻の先に迫っていた。 「安心して。もう少しの辛抱だから。今助けてあげるからね。君......よく頑張ってる。偉いよ」 エマは作りうる最大限の笑顔を浮かべた。その女神たるエマの笑顔は、消え掛けていた少女の『生』への希望を見事に甦らせていった。 生命を司る臓器、血、筋肉、脳などの身体のパーツは、『心』の好不調により、その活動のMAX値が大きく左右する。 身体のパーツに命令を下す役割を司っているのは、いわゆる『脳』であるが、『脳』はあくまでも身体を動かす為の制御盤に過ぎず、その制御盤を操作しているのが正に『心』である。 そのように考えると、『病は気から』などと言う言葉は、決してオカルト的な発想から来るものでは無く、列記とした根拠から成り立っているものと推測される。 もしエマの笑顔に、瀕死の少女が息を吹き返したとしたなら、それは正にその事を裏付けるような一幕だったと言えよう。 「う......うん」 少女は激痛に耐えながらも、一瞬ではあるが笑顔を見せた。心無しか目に光が戻ったようにも見える。 この子の命運はまだ尽きてはいない...... その笑顔に、まだ潰えぬ少女の生命力を感じ取ったエマは、救出出来る事に疑いを持たなかった。 阿修羅の顔から、瞬時にマリア様の顔へと変化させ、少女の生命力を途端に引き戻したエマの横顔を見詰める『黄』
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