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皆自分の命を省みず、ただ無力な村民を救いたい一心で、遮二無二救出を行っていた事は間違い無い。
それは上官からの命令だから仕方なくやってたのか?
いや......違う。
救出している時のあの顔を見れば一目瞭然だ。
こいつらが国家転覆を企てるテロリストだって?
そりゃ無いわ......
どう考えたって。
『沙世さん』......
エマはこの時、1年前 秋葉大地率いる『秋葉会』に洗脳され、破壊工作を続けていた『蕪 沙世』の顔が頭に浮かんだ。
澄みきった一途な心を持った忠誠心の塊みたいな娘だった。どうもその沙世さんとこの連中がダブって仕方が無い。
沙世さん......ここにもあんたと同じ人達が居たよ。
出来ればこいつらを、まっとうな道に戻してやりたいんだけどな......でも皆頑固そうだし。難儀な話だ。
エマは1回鼻でフッと笑うと、直ぐ様我に返った。今は他の事を考えている場合では無い!
よしっ。
エマは煩悩を払うかのように一声気合いを入れる。
この少女が最後だ!
土砂崩れが起きる前に皆をいち早く避難させ、この小さな少女の命を救わなければ!
エマは1回大きく頷くと、表情を硬く引き締めて大号令を下した。
「いいかお前達、よく聞け。救出した村民を連れて即刻村役場に向かえ。体力が残ってる村民にも協力して貰い、一人残さずここから撤収するんだ。おい『赤』! お前が陣頭指揮を取れ。頼んだぞ」
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