第十七章 玄武

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斜面の亀裂は、先程見た時よりも遥かに広がりを大きく見せ始めている。 ゴトッ、ゴトゴトゴトッ! 遥か上方から、立て続けに転がり来る石やら土の塊やら......その数も時間の経過と共にどんどん増え始めている。もはや猶予は無い。 「了解! で、頭はどうするんですか? 早く逃げないと土竜になっちゃいますよ!」 日頃は無表情な白衣の天使『赤』も、この時ばかりはちょっと心配顔。 「この下敷きになった少女を拾い出したら直ぐに追い付く。あたしは大丈夫だから早く行け!」 エマは両手を振りながら、とっとと行け!と、更なる催促を加えた。 「さあ、『黄』お前も早く!」 エマは少女の手を握りながら、すぐ横に控える『黄』にも下山を即した。 「いいえ、私にもやらせて下さい」 『黄』は引かない。人一倍正義感が強いのだろう。 「ダメだ、早く山を降りろ。これは命令だ!」 エマは少女の上に覆い被さる太い柱を抱えながら『黄』に命令を下す。 部下の命を守る事は、どの世界でも共通の義務であり、それが例えテロリストであったとしても例外では無い。 エマは断固『黄』の申し出を拒絶。首を縦には振らなかった。 正直『黄』がそんな風に言ってくれる事は嬉しい。だが実際の所、この少女を本当に救い出せるかどうかなどは解らなかった。 少女に覆い被さった重厚な柱は、さっきからどんなに力を掛けてもびくともしない。まるで鉛のように重かった。
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