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一方、地盤の緩みは残念ながらすでにMAXレベル。次の瞬間には土砂の集団ダイブが巻き起こっても決しておかしくは無い状態だ。
「『頭』が何と言おうと、ここは絶対に譲れません。部下が頭にお共するのは当たり前の事です」
『黄』も頑固だ。もしかしたら同じ年頃の娘でも居るのだろうか。
まだ未婚のエマには解らないが、母が子に抱く母性と言うものは、何物にも揺るがない莫大なパワーを蓄積している。それは正に人間の脳に埋め込まれた本能と言えよう。
谷川を見下ろせば、各々が手を取り合い、すでに下山を開始している。
今山を降りず、もし最悪の事態が生じた場合、『黄』も間違いなく道連れとなる。
自分一人で十分!
道連れなど必要無い!
エマは今一度決心を固めると、鬼の表情を浮かべ『黄』にそれまで見せた事も無ような雷を落とした。
「頭の言う事が聞けないのか?! 自惚れるな! お前なんかが居たって、足手まといになるだけなんだよ。とっとと失せろ。邪魔だ!」
そう叫びながら、エマは『黄』の身体を突き飛ばした。
「だから帰る訳にはいかないんだって! その子は......その子は......あたしの娘なんだよ!」
『黄』の顔は雨と涙でグシャグシャになっている。正に半狂乱。完全に取り乱していた。
!!!
なっ、なんてこった! こいつの娘か!
エマは余りの驚きに動揺を隠せない。
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