第十七章 玄武

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「う、う、う......お、お母さん......」 あまりの苦しさに思わず少女は呻き声を漏らす。耐え難い苦痛であるに違い無い。 もういい加減、体力も気力も限界に来ているのだろう。思わず目を背けたくなるような光景だ。 「もうちょっとだから......もう少しだけ辛抱して。今お母さん戻って来るからね」 エマがいよいよ少女の限界を見極めた時だった。山の斜面を駆け上がって来る足音が。 バタバタバタッ! おお、戻って来たか! 『頭! こ、こんなんでいけますか?!』 後ろを振り返れば『黄』が注文通りの『棒』を担ぎ、肩で息をしている。  ハァ、ハァ、ハァ...... 『黄』はすでに身体の半分が水没している愛娘の姿を目の当たりにし、瞬時に慟哭の表情を浮かべた。 そして思わず...... 『恵麻(えま)ちゃん!』 我が子の名前を嗚咽するかのように叫んだ。 それは『富士国』の英雄『アマゾネス』から、一児のママに戻った瞬間だった。 「その子、恵麻ちゃんって言うのか。そいつは最強の名前だ! よっぽどの事が無い限り死なないよ。安心しろ。ハッ、ハッ、ハッ」 切羽詰まった緊張感を吹き飛ばすような、エマの笑い声が山間に響き渡った正にその時だった。 ゴー! ガタガタガタ! バタバタバタッ!
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