第十七章 玄武

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「なっ、何を言ってるんだ?! 頭と『黄』を見捨てるって言うのか?!」 『青』が信じられないような表情で反論する。 「この状況を見ろ。万に一つも生存は有り得ない。我々は頭に村民の救出を任されたんだ。 あたしの命令に従え。頭の指示通り今からこの『赤』が陣頭指揮を取る。すぐに引き上げるぞ。出発だ」 そんな号令を下した『赤』は、土砂崩れによりすっかり景色を変えてしまった斜面を見上げる。 『赤』は山上に向かって一礼すると、素早く行列の先頭へと向かって姿を消していった。 自然の脅威により、事件は思わぬ方向へと進路を変えて行った。 この後『EMA探偵事務所』の運命は一体どうなってしまうのか?  それは神のみぞ知る事。人間たる我々ごときが知るよしも無かった。 豪雨は更にその勢いを増していき、全く収まる事を知らない。それはまるでエマが流している涙のようだった。
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