第十八章 獅虎豹鷹 朱雀 

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 ※  ※  ※ 「テヤァー!」 パコンッ。 「ソウリャー!」 バゴッ。 「し。しまった!」 「ヨッシャー!」 卓球台の袖でガッツポーズをとる未来。はだけた浴衣姿で得意満面。所謂、どや顔だ。 一方、額に汗を浮かべて悔し顔なのは健介。 年齢が近いせいもあるのだろう。出会ってからまだ1日と言う短い時間ではあるが、すぐに意気投合した二人だった。 組織と青島麗子殺害契約を交わしたにも関わらず、実行出来なかった未来。 美緒の娘『もも』を誘拐したまでは良かったが、その一抹を美緒に吐露してしまった健介。 命を狙われていると言う事に関して、同じ境遇であるこの二人は、互いに共感し合えるものがあったに違いない。何となく解る気がする。 ここは古き良き時代の日本を思い出させるような、どこか懐かしい雰囲気が漂う温泉宿。 温泉宿に付き物と言えば、まず最初に頭に浮かぶのが卓球台。この旅館も決してその例外では無かった。 日本で卓球と言えば、決してメジャーなスポーツでは無いが、湯上がり処にあると何故か盛り上がりを見せる。 若いカップルがキャッ、キャッ言いながら、プレイしていれば、それはそれで楽しいに違いない。 この若い男二人でも、それなりの盛り上がりは見せていたが、ちょっと間が空くと途端に虚しい風が吹き荒れる。 「はぁ......」 「ふぅ......」 思い出したかのように溜め息が漏れる二人だった。 すると...... ガラガラガラ。 突如後ろのガラス扉が勢いよく開放を見せた。 マスター? ポールさん? 二人は慌てて後ろに向き直った。すると扉の向こうに立っていたのは、マスターでもポールでも無かった。 そこに立っていたのは......
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