第十八章 獅虎豹鷹 朱雀 

6/21
前へ
/1040ページ
次へ
健介の打ったピンポン玉は、ネットに跳ね返り、見事浴衣女子の遊戯する卓球台の下に転がって行く。 コロコロコロ...... 「あっ、すみません」 未来は浴衣女子の卓球台の下に潜るが、玉はあちこちに跳ね返り、中々手につかない。 卓球台の下でもごもごしている姿は実に情けない。彼女らの目にもそのように映ったに違いない。 すると、 「はい、どうぞ」 一際美しく見える浴衣女子の一人が、転がるピンポン玉を拾い上げ、未来の顔の前に差し出した。 「あ、あ、有り難う」 未来は顔を真っ赤にして、それを受け取ろうと手を前に出した。 「あら、立派な御守り......どこで買ったんですか?」 浴衣女子の目は、未来の顔では無く、首にぶら下がる大きな御守りに向けられていた。 「ああ......これね。出雲大社の御守り。自分で買ったんじゃ無くて貰いもんだよ」 「へぇ......貰い物なんだ。ふ~ん......それで 一体、だ れ に 貰 っ た の か な?」 そう問い掛けた浴衣女子の目は妙に鋭い。御守りが一体どうしたと言うのだ? 「だ、誰って......」 未来は思わず口を閉じた。 この御守りは、樹海の施設で殺人の訓練を受けている時、そこに居た女性からたまたま受け渡された物だ。 確か丸坊主だったけな......尼さんだったのかも知れない。なんか凄い焦ってるみたいだった。 俺にこの御守りを渡すと、一目散で走り去ってったっけ。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加