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健介の打ったピンポン玉は、ネットに跳ね返り、見事浴衣女子の遊戯する卓球台の下に転がって行く。
コロコロコロ......
「あっ、すみません」
未来は浴衣女子の卓球台の下に潜るが、玉はあちこちに跳ね返り、中々手につかない。
卓球台の下でもごもごしている姿は実に情けない。彼女らの目にもそのように映ったに違いない。
すると、
「はい、どうぞ」
一際美しく見える浴衣女子の一人が、転がるピンポン玉を拾い上げ、未来の顔の前に差し出した。
「あ、あ、有り難う」
未来は顔を真っ赤にして、それを受け取ろうと手を前に出した。
「あら、立派な御守り......どこで買ったんですか?」
浴衣女子の目は、未来の顔では無く、首にぶら下がる大きな御守りに向けられていた。
「ああ......これね。出雲大社の御守り。自分で買ったんじゃ無くて貰いもんだよ」
「へぇ......貰い物なんだ。ふ~ん......それで
一体、だ れ に 貰 っ た の か な?」
そう問い掛けた浴衣女子の目は妙に鋭い。御守りが一体どうしたと言うのだ?
「だ、誰って......」
未来は思わず口を閉じた。
この御守りは、樹海の施設で殺人の訓練を受けている時、そこに居た女性からたまたま受け渡された物だ。
確か丸坊主だったけな......尼さんだったのかも知れない。なんか凄い焦ってるみたいだった。
俺にこの御守りを渡すと、一目散で走り去ってったっけ。
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