第十八章 獅虎豹鷹 朱雀 

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そう言えば俺......まだ御守り首にぶら下げてたんだっけ。言われるまで完全に忘れてたわ...... 何だか解らんけど、この御守りには複雑な事情が有りそうだ。 あんまペラベラ喋って、こっちに火の粉が掛かってきても困る。 ここはうまく誤魔化しておこう...... そんな風に思ってはみたものの、未来は役者でも無ければ、演劇部出身でも無い。 また問い詰められて簡単に開き直れる程、図太くも無かった。 必然的に、発する言葉はしどろもどろになる。 未来は定まらない視線を浴衣女子に向けながら、ゆっくりと口を開いた。 「これはだね、えーと......母親から貰ったもんなんだよ。去年出雲大社行ってさ、それでその、その時のお土産だ。確かそうだったな」 気付けば4人は未来を取り囲んでいた。いつの間に健介は4人が張った結界の外に締め出されている。正に蚊帳の外状態だ。 8つの鋭い視線は、全て未来の怯えた瞳に突き刺さり、物凄い威圧感が未来の心を圧迫していた。 なっ、何なんだ? この空気は! それまでのキャピキャピ感は一体どこに行ってしまったんだ?! 殺気が美袋ってんじゃんか! 余りの豹変ぶりに思考が着いていかず、焦りを隠せない未来。それに対し浴衣女子は至極冷静に話を返す。 「へぇ......お母さんのお土産なんだ。ふーん......だから大事に首にぶら下げてんのね」 「ええ......まぁ......」 取って付けたような未来の答え方は、誰が見ても実に嘘っぽく映る。今時の若い男子が、母親から貰った御守りを大事に首からぶら下げている訳も無かろう。 怪しい空気が辺りを包み込んだその時だった。 ガラガラガラ。 突如湯上がり処の扉が豪快な音を立ち上げた。 現れたのはポールとマスターの二人だ。ナイスタイミングとしか言いようが無い。 「イツまで卓球やってるんダイ? セッカク温泉宿来たんだから、露天風呂イコウヨ」 怪しい空気などお構い無しにポールが二人を誘った。
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