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「あっ、はい。行きましょう」
未来と健介の二人は、ラケットを卓球台の上に置いて浴衣女子に背を向けた。
すると、
「私は虎子(とらこ)。それでそこの3人は、獅子美(ししみ)に豹音(ひょうね)に鷹奈(たかな)。また会う事もあるでしょうから覚えておいて。よ ろ し く ね。未来君。健介君」
そう声を掛けると4人の浴衣女子は長居は無用と、あっさりと湯上がり処を去って行った。
「誰ですか? あのイケイケ女子達は」
マスターが不思議そうな表情を浮かべながら二人に問い掛けた。
突然の美貌に目が眩み、少し脳神経が麻痺していた部分もあるが、普通に考えてこんな山奥の一軒宿にあんなモデル級の美女集団が宿泊しているのは少し不可解だ。しかも今はオフシーズンときている。マスターが不思議に思うのも当然と言えた。
でもこの二人に『御守り』の事を話してしまうと、また色々面倒臭い事になる。
仮に何かあったとしても、あんな弱そうな女達に一体何が出来ると言うんだ。
まぁ、大袈裟にする程の事でも無かろう......
あえて話す必要も無い......
「ただの宿泊客ですよ。ちょっと仲良く話してただけです」
「宿泊客......デスカ」
ポールとマスターの二人は、未だ不可思議な表情を浮かべていたが、それ以上突っ込んで来る事は無かった。
こんな山奥の一軒宿に身を隠している事など、敵に知られる訳が無い。そんな先入観が二人にあったのかも知れない。
もしここに嗅覚鋭い美緒やエマが居たら、この後の展開もきっと大きく変わっていた事だろう。
しかし残念ながら、ここにその二人は居ない。あとはもう成るようにしか成らなかった。
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