第十八章 獅虎豹鷹 朱雀 

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「そうか......よしっ。今から我々はスパイを抹殺すべく、聖経院北部の樹海に入る。立て続けの仕事で申し訳無いが、『朱雀』の名を汚す訳にはいかない。何がなんでも『玄武』より早くスパイを見付け出すんだ。いいな!」 「「「御意っ!」」」 『頭』は一気にアクセルを強く踏み込む。するとワンボックスカーは、耳障りなタイヤ音を発しながら上り坂を急ピッチで上り詰めていった。 一仕事を終えたばかりの『朱雀』にとって、次の敵はスパイにあらず『玄武』であった事はもはや言うまでも無い。 アマゾネス達が挙ってその命を狙う公安のスパイ......それはエマに心を許した珠だった。 珠の戦闘力については、今更説明の必要も無かろう。油断していたとは言え、エマの眉間に正拳を打ち込んだ事実は記憶に新しい。 更には公安で徹底的な訓練を受けてここに乗り込んで来ている。 とは言え、珠の力も決して無限では無い。能力には必ず限界と言うものが存在する。 秋葉秀樹も恐れる『アマゾネス』の精鋭2部隊から追われる事ともなれば、残された『生』の時間も、あと僅かと認識しなければならない。 唯一、珠を救う事が出来るとしたら......それはエマの存在以外には無かった。 しかしそんな唯一の頼みたるエマも、土砂崩れに巻き込まれて以降、その存在は確認されていない。 アマゾネスの中ではすでに死亡と断定され、『玄武』の頭は『赤』に頭が受け継がれている。 大嵐の際、エマは土砂崩れが再び起きる事を予知していたながら、一人の幼い『富士国民』を救う為に命を投げ出した。そんなエマに対し、アマゾネスは『神』の称号を与えていた。
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