第十九章 コピー

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「モニター確認。トレース完了。スタンバイOKです」 「それでは始める。目を瞑って、息を止めろ。はい、そのまま。動くなよ......よし、放射」 マイクに向かって一人の男が指示を送る。 すると、 ゴー...... 僅かな振動を伴いながら、地を這うような重低音が響き渡った。 『コピー室』 そのように書かれた『研究棟』最奥に位置するこの部屋では、今も白衣を纏った博士オーラ満載の男達5人が、何やら眉間にシワを寄せながら、モニターと睨めっこをしている。 ここは言わずと知れた『マンタ洞窟』の中心部。夜間は静寂に包まれる『研究棟』の一角、この部屋だけは昼夜を問わず24時間フル活動を続けていた。 『コピー室』と言う名の割りには、コピー機などは1台も置かれていない。その代わりと言っては何だが、縦長の部屋が5個、中心に並列されている。 部屋と言うか、箱と言うか...... 表現としては非常に悩むところではあるが、大きさ的には少し大きめなシャワールーム。人一人をすっぽり包み込める程度の大きさだ。 そんな『シャワールーム』には、幾本ものパイプが上下左右から挿入され、至る所に設置されたパイロットランプやデジタルゲージがまるでクリスマスの電飾のように、多種の灯りを点滅させている。 大きなガラス窓を通して、2階から博士達がこの複数の部屋を見下ろせるような造りとなっていた。 『放射』の合図から、凡そ1分が経過。僅かな振動を伴ったゴー......と言う音は、なおも継続して発せられ続けている。 何が『放射』なのか? この時点ではさっぱり解らない。
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