第十九章 コピー

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「塗布は順調、ドライモードに移ります」 「よし、始めろ」 ブルルルル...... その言葉を合図に、今度はそれぞれの部屋に複数設置されたファンが回り出す。そろそろ仕上がりと言うところなのだろうか。 「生体に問題は無いな」 リーダーらしき白衣男が、白髪頭を撫でながら問い掛けた。 「5人全て、血圧、心拍数、共に正常値内。問題有りません」 「そうか......よし」 ファンが回り続ける事、更に1分。やがて機械は一斉に停止した。プシュン。僅かな音が立ち上がる。 「完了しました」 すると、 ガチャ。 5つの『シャワールーム』の扉が同時に開放され、部屋の中からは、まるでドライアイスが焚かれていたかような白い煙が溢れ出て来る。そしてあっと言う間に周囲が霧に包み込まれていった。 すると、緊張した顔付きでモニターを睨み付けていた博士衆が思わず感嘆の声を上げ始める。 「おう.......完璧だ!」 「ブラボー、ブラボー!」 呪縛から開放された......よくは解らないが、皆そのような表情を浮かべていた。今度失敗したら後が無い......そんな気持ちの現れだったのかも知れない。 モニターに写し出されている映像...... それは今部屋から出て来たばかりの少年の姿だった。 少年の数は全部で5人。25個のモニターに映し出された映像は、それぞれの少年のパーツを全く同じ距離、同じ角度から映し出したものだった。
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