第十九章 コピー

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これだけの大規模な施設で、これだけ大掛かりな研究が継続して行われているとあらば、それに費やすコストも計り知れないものがある。  それらを捻出する為の資金源は、一体どこにあるのか? 強力なスポンサー無しでは有り得ない話だ。 もしこの研究が成功を収め、その技術が闇世界に売り出されるような事となったら...... 犯罪や殺人を行っても顔が割れる事は無く、この世は無法地帯と成り果てるであろう。 もし反社会勢力やテロリストなどにこの技術が商品として売り出されたら...... それまで平和主張者だった権限者が、知らぬ間にすり替わり、突然戦争を起こす事だって考えられる。 戦争が起きて利を得る者......それは戦勝者であり、そして武器商社だ。 日本政界最大野党『新党富士』の総裁 秋葉秀樹が影で経営する『RED GROVE COMPANY』は、正にその武器商社の最たる者であり、豊富な資金源を有する事は、1年前の『極神島』事件ですでに証明済みだ。  独立国家樹立を目標とする武闘集団『富士国』と、そこに歩み寄りを見せる秋葉秀樹...... もしこの両者の利害が一致しているとしたら......その先に見えるものは一つしか無かった。 『戦争放棄国』日本の大原則が根底から覆される日が、現実として迫って来ている事を認識せざるを得ない。 我々はこの国がそのような破滅の道に進まない事を、ただただ祈るばかりだ。 今ここで汗水流し、日夜研究に明け暮れている博士衆達は、自らの研究が破滅への道に加担している事を認識しているのか、いないのか......恐らくではあるが、そこまでは認識していないのだろう。 そんな博士衆のリーダーは、再び元気いっぱい部下に指示を送る。
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