第十九章 コピー

7/16
前へ
/1040ページ
次へ
「よし、では5人を『ビレッジ』に移動させてすぐにモニターを開始しろ。いいか、研究はいよいよ最終段階に差し掛かって来ている。『トロイの結末』までには是可否でも完璧なものに仕上げるんだ。このサンプルが成功すれば、いよいよ本家の製作が始まる。抜かるなよ!」 「はいっ!」 リーダーと別の1人の博士を残し、それ以外の者はバタバタと階段を駆け降りて行った。 それまで騒がしかった『コピー室』が俄に静けさを取り戻していく。 「リーダー......果たして既存の人間と入れ替わり、そのまま、その人間に成りすますなどと言う事が出来るのでしょうか? しかも日本の......」 「しっ、黙れ! 誰が聞いているか解らんだろ!......いいか......余り余計な事は考えるな。 我々の任務は外見上における完璧なコピー人間を造り上げる事だ。それ以降の事については別のチームがしっかりやるはずだ。今与えられた任務の事だけに集中しろ。解ったな」 「はい......」 「解ればいい」 目の前に広がるガラス越しに、階段を駆け降りて行った者達が、5人の少年達を乱暴に連行していく姿が映画のように映し出されている。 恐らくこの後『ビレッジ』に連れて行かれ、彼らの言うところの『誤差』のトレースが行われるのだろう。 これは間違いなく、世間で言うところの人体実験に他ならない。 実験が終われば彼らは正に用済み。きっと焼却炉へのピクニックが待っているに違い無い。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加