第十九章 コピー

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アナウンスが耳に入るなり、二人の博士の顔は急激に青ざめていった。 これは警報設備の故障でも訓練でも無い。列記とした『CAUTION』だ! 「なにっ? 侵入者だと!」 「しかも今、研究棟を逃走中って言ってましたよね......」 「まずい......今ここに踏み込まれたら、研究の成果が台無しになる。困った......取り敢えずはこの部屋の開口部全てにロックを掛けろ! 急げ!」 「はいっ!」 博士が慌てふためきながら、後ろを振り返ったその時だった。 ギー。 突如、後方のスライド式の扉が解放を見せ、聞き慣れないバタバタと言う足音が響き渡る。 「「だっ、誰だ?!......まっ、まさか?!」」 二人の博士は腰を抜かす程の狼狽振りを見せながら、同時に叫び声を上げた。 侵入者なのか?! 嫌な予感が...... 「残念ながらそのまさかよ。両手を挙げて後ろ向け!」 嫌な予感は得てして的中するものだ。 見れば守護兵の迷彩服を纏った二人の男女が、ライフルの銃口をこちらに向けて薄笑いを浮かべているではないか。 この者達がアナウンスで流れていた「侵入者」である事はほぼ間違い無い。 「お前達は一体何者だ? 何しにやって来たんだ?!」 両手を上に挙げながら、リーダー博士が涙混じりの声で問い掛ける。 「まぁ、そんなに慌てなさんな。別に取って喰おうって訳じゃねえからよ」 口を開いたのは、前髪で顔が半分隠れた男の方。左目の瞼に大きな傷痕が目立つ。 「単直に聞くわ。あなた達ここで何やってんの?」 続け様にそう問い掛けたのは、もう一方の女性。吊り上がった黒渕眼鏡がライトに反射して、妙に光り輝いている。 二人してニタニタ笑っているのが不気味でならない。
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