第十九章 コピー

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侵入者の一人、男の方が先に口を開く。 この男、かなり目付きが悪い。博士達の目には到底堅気の人間には映っていなかった。 「俺達は探偵事務所の者だ。依頼主は公安。ここの秘密を探りに来た。どうだ、驚いたか?」 「こっ、公安だと! って事は......君達は正義の味方?!」 二人の博士は目を大きく見開き、実に興奮した様子。何をそんなに興奮しているのか、美緒も圭一も全く理解不能だ。 「いや、ちょっと正義の味方って言われちゃうと、どうかと思うけどよ......」 「正義の味方よ! 悪い?」 煮え切らない圭一の言に、美緒がスパッと切り込んだ。 二人の博士からしてみれば、正に期待通りの答え。言葉では出さずとも、目を見開いた恍惚の表情がそのように語っている。 「我々をここから出してくれ! 騙されて連れて来られたんだ。何も好きでコピー人間を作ってる訳じゃない。本当だ、信じてくれ!」 リーダー博士は顔を紅潮させ、必死の形相で訴え掛ける。どうやら自分等が悪事に加担していると言う事を自覚しているようだ。 コピー人間を作っているのは無理矢理やらされている訳で、自分らの意思でやっている事では無い。 だから我々に罪は無いんだ! 二人が公安と聞いて、まず真っ先に自らの潔白を伝えたかったのだろう。 しかし現時点において、圭一と美緒からしてみれば、そんな事はどうでもいい話だった。 とは言え、 この者の言う通り、騙されてここに監禁され、悪に加担するような研究を強要されていたとすれば、『公安』の手配でここにやって来たと言う二人が、正に救世主のように見えた事は理解出来なくも無い。
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