第十九章 コピー

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「よし、縛り上げて牢獄に投げ込んでおけ!」 迷彩服の守護兵に号令を下した大男は、蔑むような視線で倒れた二人を見下ろしていた。見れば全員グロテスクなガスマスクを着用している。  「了解です!......あっ、隊長。こ、この二人......どこかで見た事あると思ったら......東京のホテルで我々に抵抗して来た連中です。間違いありません。はっきりと顔を覚えています。あの時の男女です!」 守護兵は、美緒と圭一の襟首を掴みながら、まじまじと顔を見詰めている。『帝徳ホテル』での騒動の際、未来を追い掛け回していた黒服集団の一人だったに違いない。 「なんだと......」 隊長なる者の顔が見る見るうちに険しくなっていく。 鋼のような肉体。突き刺さるような鋭い視線。黒スーツで全身を固めたこの男。それは他でも無い。 『帝徳ホテル』の駐車場で、エマとの一騎討ちに勝利した大門剛助(だいもんごうすけ)に他ならなかった。 「ふっ」 大門は突然思い出したかのような薄笑い。 折角、目を掛けてやってるのによぉ...... 甘すぎるって事か? まぁ、可愛さ余って憎さ100倍ってとこだな。 でもまだ諦めんぞ...... ハッ、ハッ、ハッ...... 大門はスーツのポケットからタバコを取り出した。『わかば』と書かれている。そしてガスマスクをずらし、口にくわえて火を点けた。 フウッ...... たまらんわ...... 「隊長、研究室は禁煙です。炎感知器が作動しますよ」 守護兵の一人が見かねて忠告する。 「そんなのどうでもいいわ。よしっ、引き上げるぞ。その老いぼれ博士二人も一緒に連行しろ! もう用済みだ」 「了解!」
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