第二十章 隠者の村

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まるでピントが合っていない眼鏡を掛けたような視界...... 車のフロントガラスに油が撒かれたかのような視界...... エマの目に最初に映った景色を、強いて例えるならば、そんな表現がぴったりなのかも知れない。 なんだかよく見えないんだけど...... それと......凄く身体が怠い...... エマはゆっくりと布団から身体を起こした。その途端、左腕に激痛が走る。 いっ、痛い! 見れば左腕には包帯が何重にも巻かれていた。僅かながらに血痕も付着している。 私......怪我してるんだ...... 何だか頭がボーっとして、思考がよく働かない。 そう言えば...... ここはどこ? 大きな民家みたいだけど...... それに私は誰なの? 部屋内を見渡して見れば、一番角に年期の入った三面鏡が置かれている。 エマはゆっくりと立ち上がると、ふらつきながら歩き始める。 そして気付けば、三面鏡の前に立ち尽くしていた。鏡は偽る事無く、目の前に立つエマの有りのままの姿を映し出していた。 これが私......の姿? なんで丸坊主なんだろう? 何か悪い事したのかな? 頭と左手に包帯巻かれてる.......車にでも引かれたのか? ダメだ......何も解らない。 ここはどこ? 私は誰? 私の名前は? 何してる人?...... ダッ、ダメだ......考えようとすると、頭が割れるように痛む。 エマは突然の頭痛に耐え切れず、思わず床に膝を着いた。苦痛に顔が歪む。 ウッ、ウッ、ウッ......
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