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この人が主人......私、結婚してたの?
勝也さんて......言うんだ?
やっぱ全然思い出せない。
また無理に思い出そうとすると、途端に頭が痛み始める。脳に針が突き刺さったような痛みだ。実に耐え難い。
ダメだ......
エマは再び顔を歪め、両手で頭を抱え込む。
その様子を見かねた母が、息子の軽率な行動を嗜めた。
「勝也、まだ牧子さんは精神が混乱してるんじゃ。寝かせてやらにゃあいかん。今は一人にしてやろう」
勝也にそう告げながら、母は一方的に立ち上がった。
「......解った」
続いて勝也も立ち上がる。
「おい牧子......今日は何も考えずにゆっくり寝てろ。落ち着けば必ず思い出すと信じている。
それから......例えお前の記憶が戻らなかったとしても、俺は必ずお前と過ごした愛の時間を必ず取り戻す事が出来ると信じている。
だからお前もまた、これまでのように俺を愛するように努力してくれ。頼むぞ。それじゃあ......お休み」
二人は未だ戸惑いの表情を隠し切れない牧子を取り残し、静かに部屋から出て行った。
※注
以降、エマが記憶を取り戻さない限り、エマの事を『牧子』と表現します。腹立たしいとは思いますがご了承下さい。
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