第二十章 隠者の村

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廊下の壁の柱時計は2時を指している。外の景色は正に平和な日曜日のアフターヌーン。 縁側では複数の子供達が、真冬の寒さを吹き飛ばすような薄着で、元気に騒ぎまわっている。 庭の中心には、棒で線がひかれた俄土俵が作られ、小さな女の子と恰幅の良い男の子が、ちょうど相撲の取組を始めようとしている真っ最中だった。 『小よく大を制する』そんな言葉をよく耳にはするが、二人の体格差はあまりにかけ離れていた。 戦う前から勝負は見えている...... 『素人』の目で見れば、きっとそのように映ったに違い無い。 しかし...... 絶対小さな女の子の方が勝つ! 土俵に両手をつき、構えを見せた瞬間、間合い、重心の位置などを見た牧子は、一瞬にしてそんな確信を持っていた。それがなぜだかは勿論本人も解ってはいない訳だが...... そして取組が始まった。 「はっけよーい、のこった!」 「えいー!」 「おうりゃあー!」
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