第二十章 隠者の村

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バシッ! バコッ! グエッ! キャンキャンキャン!...... ............ ............ 暫しの沈黙が辺りを包み込む。 狂暴な野犬は口から血を撒き散らしながら、一目散に山の中へと逃げ失せて行った。 野犬が立ち去った後に点々と残された血痕...... 残念ながら...... それは...... 野犬のものでは無かった。 一体この瞬き程の間に、何が起こったと言うのだろう? 気付けば少女の前方に、肩で息をする一人の女性が立ち尽くしていた。 裸足でワナワナと震えるその女性の顔には、殺気がみなぎり、未だ鋭い眼光を発し続けていた。 ハァ、ハァ、ハァ...... 見れば左腕からは、おびただしい出血が。 その女性は他でも無い...... 牧子だった。 それはほんの10秒前の出来事。 野犬の急襲に気付いた牧子は...... ダメだ!  すでに接近し過ぎている。少女の前に出るには少し気付くのが遅過ぎた。  野犬の意識は、明らかに少女の首筋に向けられていた。目の動きを見ればそれは明らかだ。 あんな大きな牙が、少女の首に突き刺さったら......恐らく即死は免れまい。 よしっ! 牧子は決心を固めると、少女の後方から一気に身体を前に投げ出す。それは正に捨て身の戦法と言えよう。
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