第二十章 隠者の村

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そんな純真無垢な子供達に、これ以上不安を煽ってはいけない...... 牧子は激痛が走る左手を後ろに隠し、白々しい程に冷静沈着。そして最大限の笑顔で語った。 「お姉ちゃんは大丈夫だよ。それよりみんなこそ怪我は無いね。ここはまたいつ野犬が出るか解らないから......今日はもうみんなお家に帰ろうね」 みんな私の手を心配してくれてんだ...... なんか嬉しいな...... 「解った......もう帰る」 子供達は袖で涙を拭いながら、皆、手を繋いで『羽黒家』の庭を後にして行った。 みんな本当に可愛い......私も小さかった頃はあんなに可愛かったのかな?  昨日の事も思い出せないのに、子供の頃の事など覚えている訳も無かった。 少し気になったんだけど......みんな身体は小さいのに、指だけは妙に長かった。野犬に襲われた子なんて、私の指より長かったぞ。 それとも私の指が短いのか? そんな事は無いような気もするが......まぁ、たまたまなんだろう。 そんな事より...... 野犬が入り込んで来るなんて、一体どう言う庭なんだ。あたしが居なかったら、あの子達みんな噛み殺されてたじゃないか。 そう言えば...... 何であたしなんかが、あんな狂暴な野犬を追い払えたんだろう? 気付いた時には、身体が勝手に動いて少女の盾になってた。その後のパンチも、脳が身体に命令したような感覚は無かった。身体が勝手にに動いていたように思える。
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