第二十章 隠者の村

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それに...... 何で私はあの子達に、人生の教訓を偉そうに唱えていたんだろう...... もしかして私、学校の先生なのかな? 自分で言うのも何だが、妙に滑舌が良かった気がする。こんな血だらけになってんのに。 何気に視線を左腕に向けてみた...... 何度見ても酷い怪我だ。野犬の牙で肉が完全に剥ぎ取られているじゃ無いか。 未だ血はダラダラと流れ続け、普通の人間であれば、この傷口を見ただけでも気絶してしまうやも知れない。 確かに傷口は焼けるように痛いし、見ていても気持ちいいものでは無い。 でも何か平気...... もしかしたら過去にこれより酷い怪我、何度もしてたのかも知れない。 それと...... さっき三面鏡でたまたま見ちゃったんだけど...... 背中の『神』って文字、これ何?...... 入れ墨なのかな?  ダメだ......また頭が痛くなって来た。腕の痛みは耐えれるけれど、この痛みはどうも苦手だ。 牧子が思わず頭を抱え込み、地に膝を着いたその時だ。 「牧子! どうしたんだ?!」 突如、背後から男性の声が。慌てて振り返ると、血相を変えて走り寄って来る勝也の姿が見えた。 「ああ......勝也さん」 「ああ勝也さんじゃないよ。お前その手どうしたんだ? 酷い怪我じゃないか」 勝也は着ていたワイシャツを脱ぎ捨て、即牧子の腕に巻き付ける。見る見るうちに、純白のワイシャツが朱に染まっていった。
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