第二十章 隠者の村

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ブルルン。 ガガガガッ...... 車は小石を弾き飛ばしながら、見る見るうちに小さくなっていく。 二人を玄関で送り出した母は、車が見えなくなるまで、じっとその様子を見詰めていた。 あの娘は一体何者なんだろう...... あれだけの怪我を負ってて、全く狼狽えた様子が見えない。 大体『ほこらの滝』から落ちて、かすり傷だけとは一体どう言う事なんだ? 本当に『ほこらの神』から守られたとでも言うのだろうか...... 『神』...... そう言えば、背中に印された『神』の文字は一体何を意味するのだろう。 濡れた服から寝間着に着せ替えさせる時に、たまたま見てしまったのだが...... いずれにせよ、ただの娘では無い。何か、とてつも無く大きなスケールを感じる。 この母もきっと、目に見えぬエマのオーラを感じ取っていたに違い無い。 さぁ、後の事は八雲先生に任せよう。 もうこんな時間だ。夕飯の支度をしなければ...... 母は回れ右をすると、二人が過ぎ去った残像に背を向けて、思い出したかのように家の中へと消えて行った。
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