第二十一章 Dr.八雲 

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トントントン...... おお、凄いな...... あたし、キャベツのみじん切りやってるじゃん。もしかしてコックやってたのか? 女たるもの、やっぱ料理くらいはしっかり出来ないと、いいところに嫁へ行けないからな。 ん? この発想が自然に出たと言う事は、やっぱまだ未婚なのか?  ............ ............ い、いかん......また考え込んだら頭が痛くなって来た。 今は考えまいと決心していても、やっぱどうしても考えてしまう牧子だった。 正直、自分が本当にこの『羽黒家』の嫁なのかは解らない。 とは言え、さっき夕食の食材を買いに行った時、すれ違う人達は皆『牧子さんこんにちわ』って気さくに声を掛けてきてくれた。 なんか自分一人が竜宮城から帰還して来たような気分になってくる。 自分は本当に勝也さんの妻なのだろうか...... それとも違うのか...... 仮に違うとしても、過去の記憶が無い現時点において、自分の居場所はここしか無かった。 今この家を追い出されたら、尼寺に駆け込むくらいしか出来ないだろう。 尼寺?  そう言えば、何であたしスキンヘッドなんだろう? ダメだ...... 今はいくら考えても無駄だ。 やっぱ一旦は忘れよう。 ここに置いて貰っている以上、居候と言う訳にいかない。出来る事は自ら進んでやっていかないと...... さぁ、頑張って美味しい料理を二人に振る舞おう! 今日は伊勢湾で取れた飛び切り大きくて、美味しそうなエビ料理。エビフライだ! どうやら今日の三人の献立は『特大エビフライ』のようだ。 ジュー...... エビにころもを付けて、フライパンに落としたその時だった。 ピンポーン...... ん、誰か来たのか? 牧子は慌ててレンジの火を消した。
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