第二十一章 Dr.八雲 

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「宜しい。それじゃ、今日の治療はこれで終わりだ。お大事に!」 医師は優しい笑顔を浮かべている。きっと子供好きなのだろう。 「八雲先生。今日は本当に有り難うございました。先生がこの村に来てくれたんで、私達は本当に安心です。それまでは何かあると、隣村の診療所まで行かないといけませんでしたから...... でも......先生みたいな腕のいいお医者さんが、何でこんな辺鄙な田舎村で診療所を始められたんですか? ......ああ、すみません。余計なお世話ですよね」 男の子に付き添ってやって来た母親が、世間話の延長程度に問い掛けた。 「不思議に思われるのも無理は有りません。お察しの通り、以前は大病院に勤めていました。 でもああ言う所は、派閥だ親族だとか色々面倒臭い事も多くて、結構大変なんですよ。それに......」 そう語りながら、八雲医師は徐に視線を足元に落とした。 「私の右足......実は膝から下は義足なんですよ。マンガみたいな話ですが、海でサメに食べらちゃいまして」 「えっ、サメに?! 本当ですか?」  母親は驚きを隠せない。男の子に限っては口をあんぐり開けて、思わずフリーズしている。
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