第二十一章 Dr.八雲 

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あれ? 何か焦げ臭い? 何かしら? 待って...... 見れば待合室のドアの隙間から、真っ黒の煙が黙々と入り込んで来ているでは無いか。 もしかして火事?! 異変に気付いた『牧子』は、慌ててベッドから身体を起こし立ち上がる。 ダメだ...... まだ身体がふらふらする...... 『牧子』が思わず壁に手をついたその時だった。 バタンッ! 突如、乱暴に待合室の扉が開放を見せた。 その途端、待合室に充満していた真っ黒な煙が一気に流入して来る。 「うわぁ! なに?!」 『牧子』は未だ状況をのみ込めていない。訳も解らず思わず慟哭の声を上げた。 すると真っ黒な煙に包まれる中、扉の向こう側から何やらオレンジ色に揺れる物体が! バタッ、バタッ......足音だ。 「う、う、う......牧子......熱い......熱い......」 なんと、その物体はしゃべり始めた! しかも炎に包まれながら、こちらに向かって歩み寄って来るではないか。 にっ、人間! 見れば、その者は全身火に包まれ、すでに皮膚が所々溶け落ちている。 やがて顔の皮膚は焼け尽き、2つの眼球は引力に任せて床に転がり落ちた。 ボトッ...... ボトッ...... ゴロゴロゴロ...... そして『牧子』の素足にぶつかり、その動きを止めた。
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