第二十一章 Dr.八雲 

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 ※  ※  ※ 一方、その頃『羽黒家』では...... 牧子は大丈夫なんじゃろうか...... 急に苦しみ始めおって...... まぁ、名医の八雲先生がおるし、勝也もついとる。早く良くなる事を祈るとしよう...... それにしても...... まさか『牧子』がアマゾネスのお頭様だったとは...... 確かにただの娘には見えなかったがのう...... 果たしてこんな大それた嘘が突き通せるものなのだろうか...... いや、それはもう考えない事にしたんじゃった。今更引けんし、何と言っても勝也の為だ。 あんな生き生きとした勝也の顔は、牧子が2年前に亡くなって以来見た事が無い。これで勝也が元気を取り戻してくれれば、一世一代の大嘘をついた意味も有るってもんじゃ。今更迷っている訳にもいかん。 母は鏡台の引き出しから徐に1枚の写真を取り出した。『牧子』がやって来て以来、仏壇から戻していた牧子の遺影だ。 牧子......すまんな。 勝也は決してお前を忘れた訳じゃ無いんだよ。 むしろお前が忘れられないから、こんな嘘をやらかしてるんじゃ。 どうか勝也と、このバカな母を許してやっておくれ...... 勝也がやっと終わりの見えないトンネルから抜け出そうとしてるんじゃ。 解ってやってくれ......牧子 母の流した涙が、牧子の遺影にポツリと垂れ落ちたその時だった。 「大変だ。火事だ!」 「山の麓で火事だ!」 突如、外でけたたましい叫び声が響き渡る。
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