第二十一章 Dr.八雲 

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牧子...... やっぱあの世で怒っとるのかのう。 神様は許してくれんのかのう。 いや、悪い事ばかり考えるのは止めよう。 きっと今頃は診療所の外で落ち着いているに決まっとる。 運動神経だけはいい息子じゃ。心配には及ばん。そうじゃ、そうじゃ...... 自らを励まし、無理矢理精神を落ち着かせる母だった。 ガガガガガ...... やがてお隣の軽トラが『羽黒家』の正門前に到着した。 「さぁ、乗って」 「恩にきるわ」 母は運転席に座るご主人の前で合掌する。 「止めてくれよ、縁起でも無い。お礼の替わりに手合わせるの止めた方がいいぞ。もう......いいから早く乗って!」 「すまんのぉ......」 母を乗せた軽トラは、村の中心を走る畦道を北へ北へと進んで行った。 八雲診療所までは凡そ1・5キロ。大した距離では無いが、母の足では歩いて1時間は掛かる。高低差が激しい道ではあるが、車なら精々5分と言うところだろう。 車が進むにつれて、やたらと黒い粉のようなものが、フロントウィンドウに舞い落ちてくる。 灰が風に舞って、四方に飛び散っているのだろう。それは火災の大きさを物語っていた。 勝也......
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