367人が本棚に入れています
本棚に追加
/1040ページ
「......」
母は夢遊病者にでもなってしまったのだろうか......
虚ろな瞳でその塊を見詰めながら、フラフラとそれに近付いて行く。
連れのご主人は、そんな母に掛ける言葉が見付からなかった。
無言でふらつく母の身体を支え、共に塊の元へと歩み寄って行く。
今の自分に出来る事と言ったら、それくらいしか無い......
事の流れて一緒にやって来たはいいが、飛んでも無く辛い役目を担う羽目になってしまったものだ。
フゥッ......ご主人は一つ大きな溜め息をついた。
「ではご確認下さい」
指揮官は、塊に掛けられた毛布をゆっくりと外す。
その塊が目に入った途端、母の脳内時計が停止を見せる。ただ黙って静かにそれを見詰めるだけだった。
............
............
............
この塊が......
あたしのお腹から生まれて来た子供の姿?
............
焼き過ぎて、食べれなくなった焼き魚くらいにしか見えないんだけど。
............
これが勝也かどうか見極めろって言われても.......
どこを見ればいいのよ。
............
あっ、勝也の腕時計だ......
大学に合格した時、お父さんから記念に貰った物だ。
............
それが、右手首に絡まってるって事は、やっぱ勝也なのかしら......
よく解らない。
............
最初のコメントを投稿しよう!