第二十一章 Dr.八雲 

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「......」 母は夢遊病者にでもなってしまったのだろうか...... 虚ろな瞳でその塊を見詰めながら、フラフラとそれに近付いて行く。 連れのご主人は、そんな母に掛ける言葉が見付からなかった。 無言でふらつく母の身体を支え、共に塊の元へと歩み寄って行く。 今の自分に出来る事と言ったら、それくらいしか無い...... 事の流れて一緒にやって来たはいいが、飛んでも無く辛い役目を担う羽目になってしまったものだ。 フゥッ......ご主人は一つ大きな溜め息をついた。 「ではご確認下さい」 指揮官は、塊に掛けられた毛布をゆっくりと外す。 その塊が目に入った途端、母の脳内時計が停止を見せる。ただ黙って静かにそれを見詰めるだけだった。 ............ ............ ............ この塊が...... あたしのお腹から生まれて来た子供の姿? ............ 焼き過ぎて、食べれなくなった焼き魚くらいにしか見えないんだけど。 ............ これが勝也かどうか見極めろって言われても....... どこを見ればいいのよ。 ............ あっ、勝也の腕時計だ...... 大学に合格した時、お父さんから記念に貰った物だ。 ............ それが、右手首に絡まってるって事は、やっぱ勝也なのかしら...... よく解らない。 ............
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