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あっ!
今後ろから歩いて来る人......
あれ牧子じゃない!
あなた生きてたのね!
何で黙ってたのよ。
ほら牧子......
勝也がここに居るわよ。
「牧子!」
母は突然視線を後方に移し、指揮官の後ろを通り過ぎようとしている女性に声を掛けた。
「私の事ですか?」
右手に包帯が巻かれたその女性は、何事かと振り返る。
母の言うように、牧子の遺影と、どこと無く雰囲気は似ているが、それは牧子では無く正確に言うと『牧子』だった。
「牧子! あなたは生きてたのね。勝也が......勝也が......」
※ ※ ※
(※ここからは『牧子』を『エマ』に戻します)
牧子? 私の事をそう呼んでるみたい。
この人誰だろう......
なんか見た事あるような気はするんだけど......
記憶が混乱していてよく解らない。
きっと人違いだろう......
「すみません。私は牧子と言う名ではありません。人違いされているのでしょう。失礼します」
そう話しながら、エマは足早にその場を通り過ぎて行った。
「牧子! 待って牧子! 行かないで!」
母にとっては実に非情な話ではあるが、実際の牧子は既に2年前死去している。残念ではあるが、それが現実だ。
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