第二十一章 Dr.八雲 

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「余計な事を......あんな嘘までつきおって......あたしが喜ぶとでも思ったのかい? まあ、それはあんたの自由だがのう。 それにしても......全くバカな息子だよ。こんな真っ黒焦げになっちまって。あたしを置いてけぼりにして全く何をやってんだか...... 昔からそうだった.....自分だけが不幸だみたいな顔ばかりしておって。 牧子が亡くなった後も、ウジウジしとるからこんな事になっちまったんだ。 とうとう最初から最後までダメ息子で終わってしまった......ああ、情けない」 母は地べたにしゃがみ込み、ただひたすら涙を流し続けている。その涙はやがて黒焦げとなった勝也の顔へと垂れ落ちていった。 村人達の手に寄り、そのまま自分も殺して欲しかった...... 実際のところ、それが本心だったのだろう。 エマはそんな母の心うちを聞いて、何か決心を固めたようだ。母の正面でひざまずき、視線を母に合わせた。 そしてゆっくりと口を開く。 「お母さん、聞いて」 お母さん...... そう語り掛けたエマの顔は、エマにあらず、勝也の妻『牧子』そのものだった。 まさかまた記憶が『牧子』に戻ってしまったのか? そんな疑念が沸く程の変わりようだ。 『牧子』はまるで実の母に語り掛けるかのようにゆっくりと、そして労るような口調で語り始めた。
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