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「いつも落ち着きの無い子じゃった。きっと慌てたんじゃろ。情けない......」
是非も無い......そんな表情だ。
「違いますよ......お母さん。勝也さんは自分の身体が焼かれているにも関わらず、実に冷静でした。そして......男らしかった」
それは決して偽りでも無ければ、お世辞でも無い。エマは全て真実を語っている。
「冷静? 男らしい?」
母は意外とも言える『娘』の言葉に、それまで伏せていた顔を上げた。予想もしていなかった言葉なのだろう。少し気が動転しているようだ。
「はい、その通りです。勝也さんは外へ出れば助かるかも知れないのに、悶え苦しみながら『診療室』へ入って来たのです。
それは、
なぜでしょうか?......
正直その時は、私も完全に自分を見失っていました。勝也さんが部屋に入って来た時、ただ火に巻き込まれたく無い一心で、気付けば勝也さんの身体から逃げていました。勝也さんの気持ちを考えもしないで......」
エマはその時の状況を思い出しながら、ゆっくりと目を伏せた。
「勝也の気持ちって?......」
「はい......私もさっきまでは、勝也さんがただ訳も解らず『診療所』に入って来た......そのように思っていました。
しかし、お母さんの涙を見た途端、それが間違いである事に気付きました。
勝也さんは、『待合室』が火の海と化した事に気付き、自分の命より大事な、別のもう一つの命を救う為に無我夢中でやって来たんです。
だって勝也さんは『診療室』に入って来るなり、真っ先に私が眠っていたベッドに向かって来たんですから......
何であの時、その事に気付かなかったんだろう......ちょっと考えれば解る事なのに......」
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