第二十二章 珠(たまき)の結末

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人だ! 人が道路の真ん中で、フラフラと立ち尽くしているでは無いか。 時速70キロの高速でカーブを曲がり切り、更にアクセルを強く踏み込んだ矢先の事だった。 危ない! ポールは瞬発的にブレーキを踏み、そしてハンドルを切った。 キーッ! するとタイヤは、耳障りなスリップ音を立ち上げ、一気にバランスを失う。 ガガガガガッ! ............ ............ やがて車は大きくコースアウトし、見事大木をなぎ倒す。そして漸くその動きを止めた。 見ればエンジンからは黒い煙が立ち上がっている。 それはポール自慢の大型四駆が、ただの鉄の塊に成り果てた瞬間だった。 痛てててて...... フロントガラスには蜘蛛の巣状のヒビが入り、そこに額を強く打ち付けたポールの眉間からは、一筋の血が流れ落ちていた。 「だ、大丈夫......です......か......」 何やらサイドウィンドウの外から、蚊の鳴くような声が。 その声のする方角へ顔を向けようとするが、衝突のショックで首が回らない。鞭打ち症も引き起こしているようだ。 もう踏んだり蹴ったりとしか言いようが無い。
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