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人だ!
人が道路の真ん中で、フラフラと立ち尽くしているでは無いか。
時速70キロの高速でカーブを曲がり切り、更にアクセルを強く踏み込んだ矢先の事だった。
危ない!
ポールは瞬発的にブレーキを踏み、そしてハンドルを切った。
キーッ!
するとタイヤは、耳障りなスリップ音を立ち上げ、一気にバランスを失う。
ガガガガガッ!
............
............
やがて車は大きくコースアウトし、見事大木をなぎ倒す。そして漸くその動きを止めた。
見ればエンジンからは黒い煙が立ち上がっている。
それはポール自慢の大型四駆が、ただの鉄の塊に成り果てた瞬間だった。
痛てててて......
フロントガラスには蜘蛛の巣状のヒビが入り、そこに額を強く打ち付けたポールの眉間からは、一筋の血が流れ落ちていた。
「だ、大丈夫......です......か......」
何やらサイドウィンドウの外から、蚊の鳴くような声が。
その声のする方角へ顔を向けようとするが、衝突のショックで首が回らない。鞭打ち症も引き起こしているようだ。
もう踏んだり蹴ったりとしか言いようが無い。
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