第二十二章 珠(たまき)の結末

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ポールは身体を捻り、サイドウィンドウの外に立ち尽くす人間に視線を向け、本能のままに怒りをぶちまけた。 「だ、大丈夫な訳がナイダロウ......あんた死ぬキカ?!」 ポールは苦痛に顔を歪めながら、今一度その者の姿を睨み付けた。 !!! 「アンタは......」  「ご......ごめんなさい。ちょっと歩くのが......辛くて......あと......しゃべるのもちょっと......」 今ポールの目に映る者は、立っている事すらままならない様子。見れば右太ももからは大量の血が流れ落ちていた。 スキンヘッドに清楚な顔立ち。 白衣に草履。 尼と思われるその年若き女性の顔を、ポールは忘れる訳も無かった。 「アナタは、樹海のイリグチで自分にお経を唱えてくれたあのアマサン?!」 ポールは思わず目を丸くした。 「そう言うあなたは、もしかして......『EMA探偵事務所』の......人?!」 その女性も驚きを隠せない。 なっ、なんと...... この人はエマさんの事を知っているのか?! それどころか自分等が探偵である事まで解っているようだ。 それはそれとして...... 再びその女性に視線を向けてみれば、なおも大量の血が、右ももから流れ続けている。 こんな状態でよく歩けるものだ。並大抵の精神力では無い。 自分等と同じ臭いがする...... それは最初に見た時から感じていた事だった。
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