第二十二章 珠(たまき)の結末

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ポールは突然我に返ると、運転席から飛び出し、今にも倒れそうなその尼の身体を支えた。そして静かに腰を降ろさせる。 「チョット、傷口をミセテ」 重症を負っているとは言え、年若き女性の太ももをさらけ出すなどの荒行はちょっと気が引ける。 しかし躊躇している場合では無い。ポールは女性の真っ赤に染まった白衣を一気にたくし上げる。 「コレハ......」 ポールは傷口を見て唖然とする。 この傷跡は一体何に寄るものなのか......その答えは一目瞭然だった。 「銃で撃ち抜かれました......ももを貫通しています。ちょっと下手打っちゃって」 女性は額に脂汗を浮かべながら、如何にも辛そうな表情を浮かべる。それにしても酷い傷だ。ザクロの如く見事に裂けていた。 直ぐに止血をしなければ、命に関わる状況だ。ポールは車の荷台からロープを持ち出し、右足の付け根をきつく縛り付けた。 続いてダッシュボードの中から包帯を持ち出し、患部をぐるぐるに巻き付けていく。 しかしそんなのは所詮、応急措置に過ぎない。 一刻も早く病院で手当てを受けさせなければ! ポールは慌てて、ポケットからスマホを取り出す。予想はしていたが、山奥だけにやはり圏外だった。助けは呼べそうに無い。 車は見ての通りスクラップ。 射抜かれているのが足だけに、人里まで歩いて行くのも厳しかろう。
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