第二十二章 珠(たまき)の結末

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太ももを銃弾で射抜かれた逃亡者は、ここから更にこっちの方角へ逃げて行ったよ...... そんな道標に、アマゾネスは必ず喰らいついて来る! ポールはそう信じて止まなかった。 多勢に無勢とは言え、戦いの場を暗闇の森に持ち込めば、銃弾の嵐も木が盾となり、暗闇が煙幕にも成り得る。 自然に逆らわず、自然を見方にさえ出来れば、戦いの神は必ず自分に味方してくれる。ポールはそう確信していた。 正直エマを始め、この程度の自虐は既にお家芸と化している彼らではあったが、慣れていない珠からすると、実にショッキングな光景であったに違い無い。 未だ呆気に囚われ、口をポカンと開けている。 人間の感情と言うものは、実に不思議だ。 最初にポールを見た時は『何だこの柔な男は』 それが第一印象だった。 そんな弱そうに思っていた男が、突然、気が狂ったように頭を打ちつけ始め、 今度は『なんだこの変態は』 それが次の印象だ。 そしてその行動が全て自分を救う為の策と知ると、 一転『なんだこの頼れる男は』 に変化する。 それは正に『恋』の三段活用へと発展していった。 「......」 珠はボーっとした表情で、逞しく走り去って行くポールの背中を、ただ無言で見詰めていた。 正直、珠はこの美貌にも関わらず、これまでの半生において、恋愛と言えるような恋愛をした事が無かった。 故にウブであり、単純でもある。ウブであり単純でもある為、一直線でもある。 多少演技掛かったポールの頭割りも、演技掛かっているなどとは夢にも思っていない。
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