第二十二章 珠(たまき)の結末

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珠は心の中で呟く...... 必ず生きてここに戻って来て下さいね。 ここで帰りを待っていますから...... でも...... それまで私、頑張れないかも知れない...... 珠の太ももからは、未だ激しい血が流れ落ち続けている。その勢いは一向に衰えを見せてはくれない。唇は紫色に変色し、顔に血の気は殆ど無くなっていた。 なんだか眠くなって来た...... 寒い...... 珠は今や三途の川を渡り始めていた。 そんな珠を、川から岸へ呼び戻す事が出来る人間が居るとしたら......それは最早ポール以外には考えられなかった。 ポールの敵はアマゾネスに有らず。 真の敵......それは正に『時間』だった。 時間と戦う為には、逃げの一手は使えない。無敵のアマゾネス多勢を相手に、一人だけで即開戦、即勝利、即撤退。 何だか雲を掴むようなシナリオではあるが、それ以外に珠を救う手立ては無かった。 ポールは既に腹を括っている。特に秘策が有る訳でも無い。 そんな開き直ったポールの頭に浮かんでくるもの......それは珠の笑顔だった。 珠さん...... もし生きて帰って来たら、 まずはお友達から。 本気になっているのはむしろこの男の方だった。
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