第二十二章 珠(たまき)の結末

22/31

367人が本棚に入れています
本棚に追加
/1040ページ
「う、う、う......エマさん」 見るからに苦しそうな様子。顔色から察するに、最早猶予は無かった。 「珠さん、大丈夫か?! 奴ら見事に居なくなったぞ。死んだ振りしてくれて助かったよ。うちらツーカーだな」 無理矢理の笑顔を投げ掛けるも、珠のリアクションは思いの外薄い。 まさか弾が当たってしまった?! 一瞬不安が過る。 よくよく見れば、珠が寄り掛かる大木には、エマが撃ち込んだ6発の銃弾が見事にめり込んでいた。 結構暗かったから、珠の身体に当たりはしないかと、実はヒヤヒヤだった...... まぁ、当たってないみたいだ。良かった...... 「さぁ、珠さん。起きれるか? すぐに病院に連れてってやるぞ」 エマは珠の身体を優しく抱き起こした。 すると、 「う、う、......ポールさん......」 「ん、何だって?」 「ポ、ポールさん......」 「ポール?!」 思いも寄らぬ珠の言葉。ここでその名が飛び出すとは夢にも思っていなかった。 「ポールさんて......あいつ......ここに来てたのか?」 圭一とも、美緒とも、そしてポールとも、久しく顔を合わせていない。 俄にゆるむエマの頬...... それは砂漠の中にオアシスを見付けたような表情だった。 「あたしからアマゾネスを引き離す為に......自ら頭を割って、血を垂らしながら走って行った。ハァ、ハァ......」 珠は乱れる呼吸の中、息絶え絶えに答えた。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

367人が本棚に入れています
本棚に追加