第二十二章 珠(たまき)の結末

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そして...... 漸く夢にまで見た『頭』との再会に歓喜した矢先の事。 スパイを助け起こす『頭』の姿など、決して見たくは無かった。 しかし、 彼女らは『富士国』の守り神。 スバイは勿論の事、それが『アマゾネス 玄武』の頭であろうとも、裏切りを見逃す事など、出来る訳も無かった。 この時、一番辛い思いをしているのは、珠でもエマでも無く、きっとこの6人だったに違い無い。 信じていた人に裏切られた......そんなやるせない気持ちもあったであろう。 やがて6人は、ほぼ同時に銃口を上げた。正に断腸の思いだ。 やがてエマが口を開く。 「お前達があたしを探し求めていた事は、素直に嬉しいし、感謝もしてる。 お前達が背負い込んでるものを考えれば、今あたしに銃口を向けている事も十分理解出来る。 お前達と同様、あたしにも守らなきゃならないものが有るんだ。それは今ここで、三途の川を渡り掛けてる珠さんの命だ。 残念ながら、お前達の要求には応えられない。もしお前達が、無理にでもこの珠さんに危害を加えようとするならば、あたしは自らが盾となり、この命を守り通すだろう」 エマはきっぱりと言い切った。その表情には寸分の迷いも無い。 とは言え、 向けている銃口1つに対し、自分に向けられている銃口は6つ。 対峙する距離はたったの3メートル。 例えそれがエマであったとしても、彼女らと戦う事は玉砕以外には考えられなかった。 「解りました......ならば『頭』にその者を殺せとはもう言いません。黙ってここから立ち去って下さい。 後の事は我々が処置します。それも......駄目でしょうか?......『頭』」 あなたは一体何者なのですか? それはもう聞かないと言っているのだ。彼女らにしてみれば正に最大限の譲歩と言えた。 自分等の手で『頭』を殺める事だけはしたく無い。そんな強い気持ちの現れなのだろう。 そんな彼女らの強い気持ちに対しエマは、 「断る」 その一言だった。
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