第二十二章 珠(たまき)の結末

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そして再び口を開く。 「有り難う......そのお気持ちだけで十分です。私は『富士国』で生まれ『富士国』で育ちました。 死ぬ時も『富士国』でありたいと思っています。それに......」 そこまで話すと『黄』は突然口を閉じた。 その後、一体何を言おうとしたのだろうか...... 「そうか......解った。余計な事言っちまった。すまんな...... それじゃ、あたしは行くぞ。大事な命預かってるから......」 エマは一言告げると、一気に珠の身体を担ぎ上げた。 エマは忘れていた...... 『黄』には幼き娘が居る事を。娘を一人残して『富士国』を離れる事など出来る訳が無い。 あいつ...... 逃げれない事を解っててやったのか...... それと...... お前が助けたのは、あたしと珠さんの命だけじゃ無かった...... その事に今やっと気付いたよ。アマゾネスに在籍していながら、今頃気付くなんて情けない。まだまだあたしも浅いな...... それに比べてお前...... 若いのにほんと思慮が深いな。『富士国』も捨てたもんじゃ無い。 それだけに勿体無い...... ほんとにそう思うよ。遥さん...... エマは敵とは言え、決して敵とは思えなかった6人の戦士達を思い出しながら、ただひたすら前へと突き進んで行った。 次に会う時は、敵と味方の関係。 出来る事なら『玄武』とは戦いたく無い......切にそう願うばかりだった。 しかしそれと同時に、 『玄武』との死闘。それが避けれない事も解っていた。 運命とは皮肉なものだ......
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