367人が本棚に入れています
本棚に追加
/1040ページ
そして再び口を開く。
「有り難う......そのお気持ちだけで十分です。私は『富士国』で生まれ『富士国』で育ちました。
死ぬ時も『富士国』でありたいと思っています。それに......」
そこまで話すと『黄』は突然口を閉じた。
その後、一体何を言おうとしたのだろうか......
「そうか......解った。余計な事言っちまった。すまんな......
それじゃ、あたしは行くぞ。大事な命預かってるから......」
エマは一言告げると、一気に珠の身体を担ぎ上げた。
エマは忘れていた......
『黄』には幼き娘が居る事を。娘を一人残して『富士国』を離れる事など出来る訳が無い。
あいつ......
逃げれない事を解っててやったのか......
それと......
お前が助けたのは、あたしと珠さんの命だけじゃ無かった......
その事に今やっと気付いたよ。アマゾネスに在籍していながら、今頃気付くなんて情けない。まだまだあたしも浅いな......
それに比べてお前......
若いのにほんと思慮が深いな。『富士国』も捨てたもんじゃ無い。
それだけに勿体無い......
ほんとにそう思うよ。遥さん......
エマは敵とは言え、決して敵とは思えなかった6人の戦士達を思い出しながら、ただひたすら前へと突き進んで行った。
次に会う時は、敵と味方の関係。
出来る事なら『玄武』とは戦いたく無い......切にそう願うばかりだった。
しかしそれと同時に、
『玄武』との死闘。それが避けれない事も解っていた。
運命とは皮肉なものだ......
最初のコメントを投稿しよう!