第二十三章 FIELD

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 ※  ※  ※ 「やったー! 当たった! 当たったぞ!」 生まれて初めて発した銃弾の手応えに、歓喜の表情を浮かべる初老の男。 お前は本当に自殺志願者なのか?  誰しもが疑うような実に垢抜けない喜び方だ。 遥か遠くに見える赤い『的』から、命中の合図とも言える血の噴水が立ち上がっている。 「俺も!」 「私も!」 パンッ、パンッ、パンッ! パンッ、パンッ、パンッ! 取り巻きの3人も、負けじと目の色を変えて撃ちまくる。 「逃げたぞ。追い駆けろ!」 パンッ、パンッ、パンッ! パンッ、パンッ、パンッ! 朝日を背に受けながら、4人の自殺志願者達は、俗世の憂鬱を忘れ、『的』を撃ち殺すべく、普段見せた事の無いような馬力で森の中を駆け抜けて行く。 「ちょっと待て、あそこ、あそこ!」 若い男が急ブレーキを掛けて、指を指す。何をそんなに興奮しているのか? 顔が真っ赤だ。 見れば一際目立つ大木の影に、チラチラと風に靡く赤いものが...... フッ、フッ、フッ...... 4人は薄笑いを浮かべながら、抜き足、差し足、忍び足...... かくれんぼの鬼にでもなったつもりでいるのだろうか。気配を圧し殺しながら、ゆっくりと近付いて行く。 そして大木の裏に辿り着くと、 せえーの! 「みーつけた!」 バンッ、パンッ、パンッ! パンッ、パンッ、パンッ! 大木の前に躍り出て、一斉連射! ............ ............
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